日本発の本格的なオンライン大学

学生用ログイン

社会課題に挑む女性起業家の「問い続ける生き方」に学ぶ
「ビジネスで地域と女性の未来をつくる。 ~当たり前を疑い続ける生き方・働き方とは~」開催レポート

サムネイル画像

2025年7月16日に、キャリア教育をテーマにした在学生向けオンライン講座として、「株式会社陽と人(ひとびと)」代表取締役社長の小林味愛(みあい)氏を招いた特別プログラム「ビジネスで地域と女性の未来をつくる。~当たり前を疑い続ける生き方・働き方とは~」を開催しました。本記事では、その講義内容をレポートします。

「何のために生きるのか」「誰のために働くのか」自問続けた半生

小林氏は2017年に福島県・国見町で「株式会社陽と人」を設立。地方創生を軸に、生産・流通・卸売、商品企画、コンサルティングなど多岐にわたる事業を展開しています。東京で生まれ育ち、国家公務員としてキャリアをスタートした小林氏が、なぜ地方へ移住し起業に至ったのか。その背景には、これからの進路を考える学生にとって大きなヒントとなるストーリーがありました。

幼少期から思春期にかけて、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件、アメリカ同時多発テロなどの報道や、祖父から聞いた戦時中の話に衝撃を受けた小林氏は、「人間は何のために生きるのか?」という虚しさにも近い問いを抱えてきたと言います。「公正な社会」を目指し国家公務員となるも、意思決定の場である国政の現場こそが社会のひずみを生み出していると感じ、自分の仕事が誰の幸せに繋がっているのかわからなくなっていったそうです。そこで地方の観光や農業の振興コンサルティングを行う会社へ転職しますが、ここでもやはり自分が提供できている価値や喜んでくれている相手が見えないことに疑問を覚え、ストレスを感じてしまいました。

「たった一人にでも“ありがとう”と言ってもらえる仕事がしたい」

心身共に疲弊した中で気づいたのは、「誰のために何をやるか」が明確であることの大切さでした。たった一人にでも「ありがとう」と言ってもらえる仕事を求めて、小林氏は福島県・国見町への移住と起業を決意。最初はなかなか地域住民に受け入れられなかったそうですが、2年ほどかけて関係構築をしながら地域の課題を見つけていきました。やがて国見町の特産物である桃などの農産物の廃棄に着目し、形が規格外でも味に問題のない商品を買い取り、都市の小売店などへ流通させる仕組みを作りました。

  • 国見町の特産物である農産物
  • 国見町の特産物である農産物を流通させる仕組みを構築

「女性の健康課題」を地方創生と同時に考える

小林氏が地方創生と同時に取り組んでいるのが「女性の健康課題」。自身のハードワーク時代に経験した女性ならではの不調を通して、早くから学ぶ機会の重要性を感じたことが、事業を進めるきっかけとなりました。福島県の名産「あんぽ柿」の製造過程で出る柿の皮の成分を活かした化粧品を開発し、女性のためのデリケートゾーンブランドを立ち上げ、また、健康課題を知るためのガイドブック制作や企業研修なども手掛けています。

学生からの質疑応答では、地方移住や起業に関する質問に加え、地域住民や仲間との信頼関係の築き方などについて答えていただきました。最初は歓迎されていなかった状態から、高齢の町民に「仕事に男も女もない、この歳でそれに気づけただけであなたに出会えてよかった」と言われるまでの変化は、地方創生にも女性課題にも通じるエピソードでした。

  • 福島県の名産「あんぽ柿」を活かした化粧品
  • 福島県の名産「あんぽ柿」

自分に嘘をつかない生き方を貫くことが人生を豊かに

小林氏が最も伝えたかったメッセージは「人生の長さは決められないが、濃さは自分で決められる」。「何のためにやってるのか?」と常に自問し続けてきたこの問いに、自信を持って答えられる今は、人生が心地よいと感じているそうです。

「地域」と「女性」の2つのテーマを軸に事業を展開する小林氏の話は、地方創生や女性課題に限らず、あらゆる社会課題の解決とビジネスを結び付けて考えるヒントを与えてくれます。何より、どんな時も「誰のためなのか」と問い続ける姿勢は、これから自分の将来を選び取っていく学生たちに、大きな示唆を投げかけました。


📩 お問い合わせ・取材依頼について

本件についてのお問い合わせやご取材依頼は お問い合わせフォームよりご連絡ください。

一覧へ戻る